代表の中尾です。
いつもお読みいただきありがとうございます。
労働条件の不利益変更は非常にハードルが高いというイメージがあると思います。
私も最近までそうでしたが、意外にそうでもないというふうに考えを改めるようになりました。
たとえば、期間の定めのある労働契約で働く方(いわゆるパート・アルバイト)の場合、当初に合意した労働条件が実態に合わなくなった場合、どうするかという場面を想定します。
1日8時間のいわゆるフルタイムで働いてもらってきたが、本人の能力向上や業務量・実施方法の変化などで、1日6時間で済むようになった場合、「では次回の契約からは1日6時間で更新します」というのは理屈としてはスムーズですが、時給制の場合、それによって給料が減ることになります。
給料は重要な労働条件ですので、ここで不利益変更の心配が出てくるわけです。
一方で、労働時間も重要な労働条件ですので、労働時間が短くなるという点はどうかということを検討します。
労働時間は「拘束時間ー休憩時間」ですので、8時間労働とすると拘束時間は休憩時間を含む「8時間45分(または休憩を多めに設定して9時間)」となります。つまり、8時間労働で休憩時間中は自由であるとしても、実際にはそれだけ契約に縛られる時間があるということです。
さて、冒頭に設定した状況では、8時間労働から6時間労働に変更して契約更新するということですが、この点について労働者の不利益の程度はどうでしょうか。
給料は25%の割合で減少しますね。なかなか大きそうです。
しかし、労働時間も25%減少するので、その分だけ労働者は自由にその時間を過ごすことができます。
仮に、それまで余っていた2時間の労働時間中、やることはないがそこにいないといけない(拘束)、かといってやることもないので仕方なく黙ってネットサーフィンをしているというような場合、本人にとってその時間は利益と言えるのでしょうか。
「お金をもらいながら遊べていい」という見方もあるでしょうし、「暇を持て余すだけの苦痛な時間」という見方もあるでしょう。そこは本人がどう感じているかによります。
私の考えでは、「時間」や「労働能力」は本人が本人のために使うのが本来で、他人のためにそれらを使うことは必要最小限であることがベストであり、業務上の必要性が無いという合理的な理由の下、早く労働契約から解放することで本人が自分の時間や能力を自分のために使う自由を得られるのは最大の利益だと思います。
お金が必要ならスキマバイトで2時間だけ働くことも可能ですし、家でゆっくりしても運動しても趣味に興じてもいいわけです。
ところが、労働条件は従前と同様で更新しないといけないというふうに不利益変更を恐れるがあまり、硬直した考えに陥っているパターンをよく見かけます。条件を変更できないので「雇い止めするか否か」という極端な選択で迷っているという相談も多くあります。
そうではなく、あくまでも業務上の必要性に応じて労働条件は決まるわけですし、そこに若干の交渉が生じることで調整が入る(時給を若干UPさせる等)ことで「合意」できるのならそれでよいですし、できないなら更新は不可という、ただそれだけのことです。
「雇い止めするか否か」という選択しかないという極端な思考に陥ると、使用者は労働者のことを「悪い人間(暇を持て余して遊んでいるだけ)」と思い込んでしまうこともありますし、労働者も「自分を雑に扱うひどい使用者だ」と思い込んだりして、結局何かしらの紛争に発展してしまうということも往々にしてあります。
不利益変更とされやすいのは、業務上の必要性と労働者の能力とのマッチングを基に労働条件を検討しない場合です。
態度や言動が悪い労働者も中にはいますが、その態度や言動は何によって生じているのかをよく考える必要があります。
「一つの良い点によって、その人は素晴らしい」と見てしまうこともあれば、「一つの悪い点で、その人はダメな人である」と見てしまうこともありますので、いったん冷静になり、全体的に見たうえで、不利益と利益のバランスを説明できるような状態にもっていくことを先ずは目指すことが肝心です。
そうすることで、そんな場面でもないのに「雇い止めか否か」という極端な思考に陥ってしまうことも防ぐことができます。