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【社労士ブログ】視点で際立つ
作成日:2025/06/02
中小企業が、事例が少ない中でもジョブ型を導入するためには?@

代表の中尾です。
いつもお読みいただきありがとうございます。

先日、あるところから中小企業がジョブ型を導入するにあたってアドバイスが欲しいというご依頼をいただきました。


ネットで「中小企業 ジョブ型 事例」で検索してもほとんどヒットしないので困っているようでした。

こういうときに私がアドバイスするポイントは以下のようなことです。

@そもそも政府ははぜジョブ型を勧めるのか
A大企業がジョブ型を導入するのはなぜか
Bジョブ型を導入してよかったこと
Cジョブ型を導入して起こる新たな問題
Dこれらを踏まえて中小企業にジョブ型を導入する前に考えるべきこと

@は、単純にジョブ型の方が賃上げになりやすいという考え方をもっているからです。
Aは、若くて優秀で高度な専門知識・技術を国内外から確保するためだからです。
Bは、例えば富士通は、もう新卒一括採用はしないと決定するほど人材確保がジョブ型導入により実現できています。
Cは、Aが目的であるので社内での賃金格差やジョブの人気不人気が生じてしまうこと等があります。

ではいよいよ本題のDですが、中小企業がジョブ型を導入する際の前提条件として以下が考えられます。

A.ジョブ型を何のために導入するのか?
B.一人が一つ(もしくは狭い範囲)のジョブだけを行える環境なのか?
C.外部から人材を採用できるような分野のジョブなのか?
D.人材を社内で育成することを手放せるのか?
E.昇給も昇格もないのにモチベーションが維持できるのか?

Aについて、人事制度や賃金制度を導入・見直しするにはまずここからスタートします。ここを決めずに単に他社の真似をすると運用ができなくなるのでここをクリアにすることが不可欠です。

Bについては、人数が少ない中小企業ほど「一人〇役」なのが実態です。営業も現場も事務もやらなければならない環境でジョブ型を導入しても実態に合わないことになりますので、社内の環境を確認しなければなりません。

Cについては、たとえばトラックドライバーや経理事務といったジョブなら業種・規模を問わずたくさんの人材が転職市場に存在しますが、特殊な業種の、特殊な業務になると、ジョブは明確ですが経験者を中途採用することが難しいので、現実的には未経験者を長期的視点で社内で育成するほうが現実的です。

Dについては、ジョブ型は本当の意味での「即戦力」を必要としますので、社内で改めて育成することはありません。しかし、中小企業が即戦力を採用するには単純なジョブなら可能性はありますが、管理職や高度な技術・知識・経験をもつ人材になると、大企業との賃金水準の差で困難でしょう。それなのに「育成」まで手放してしまっては、採用がますます難しくなることは自明です。

Eについては、ジョブ型は仕事に値段が付くので、当然ながらジョブが変わらない限り昇給も昇格もありません。したがって、自社に勤続するメリットの有無は、同じジョブなら単純に給与の額だけになりますので、ある程度長期的な勤続も期待したいのであれば、給与以外に何かしらのメリットを用意する必要があります。

以上のことを中小企業の事業主様ご自身がそれぞれご決断していただくことが必要です。

ちょっとハードルが高そうに見えるでしょうか。

実は、事業主様からジョブ型導入を決める場合だけでなく、従業員からの要望でジョブ型を導入するケースもあります。

それについては次回のブログで書かせていただきます。