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【ブログ】視点で際立つ
作成日:2025/01/20
トラックドライバーの給与に歩合給が多いのはなぜ?

代表の中尾です。
いつもお読みいただきありがとうございます。

私は20年ほど前に、

ある大手運送会社のトラックドライバーとして働いていました。

東京都郊外のあるエリアを担当し、


朝〜夕方まで配達をし、

夕方以降は集荷、

それを帰社後に仕分けしてその日の仕事は終了という毎日でした。

いわゆる「セールスドライバー」職でした。

この「セールス」という言葉ですが、

実際に私がセールスしたのは「集荷先の開拓」や「会社が売り出す商品(季節もの等)」でした。

集荷先が増えたり商品が売れれば扱う荷物が増えるので、

歩合給に反映されるという仕組みでした。

給料は基本給8万円強+歩合(配達1個いくら、集荷1個いくら)で、

残業代を含む総支給額は25万円前後だったと記憶しています。

ちなみに、

入社した当時に先輩に言われたのが、

「ドライバーは何年務めてもずっと同じ給料」ということでした。

つまり、

定期昇給の仕組みが無いので、

給料を上げたければ、

自分が扱う荷物の数を増やすしかないのです(歩合給)。

この会社だけがそうした給与体系化というとそうではなく、

多くのトラックドライバーさんたちはこうした給与体系の下で働いています。

ところで、

なぜトラックドライバーに歩合給を採用する会社が多いのでしょうか?

給料を払う側の考え方を想像すると以下の3つがあるように思います。

@荷物の量は日々異なること
A定額を払うと怠けるのではないかという懸念
B同業他社と同じ給与体系にしていること

なお、

複雑になるのでここでは取り上げませんが、

歩合給にすることで割増賃金の額が通常より少なくなるケースがあるので、

それを意図している可能性もあります。

Bについては会社が給与を決める際には同業他社に合わせることが一般的なので、

運送会社・物流会社だけが特別ということでもないでしょう。

Aについては経営者さんによるかと思います。

では、@はどうでしょうか。

確かに、

荷物の量は日々変わります。

私が集荷に行って、

毎日荷物がある集荷先と、

たまにしか荷物が無い集荷先とが入り混じっていましたので、

日々の仕事の繁閑はずいぶん違っていたと思います。

しかし、

1年間で考えれば、

毎年そんなに大きな差はなく推移していることがほとんどだったようにも思います。

そうすると、

トラックドライバーに対する給与を年間で考えれば、

大部分を歩合給にせずとも毎月ある程度まで決まった額を払うことは可能ではないかと私は考えます。

それに、

私は「セールスドライバー」でしたので、

自分の努力で荷物の量を多少なりとも増やせる余地はありましたが、

これが配車担当者に集荷先や配達先を指定されて動くトラックドライバーにはそんな余地はありません。

そうすると、

ベテランドライバーも新人ドライバーも同じ給与体系で定期昇給もないとなると、

いったいどうやってベテランと新人に給与の差をつけるのでしょうか。

私の想像ですが、

ベテランの担当する配達先や集荷先と新人のそれらとの物量に差が無いという前提の下では、

新人よりベテランの方が運転や荷捌きが上手なので、

自然と歩合で差がつくであろうということを意図しているのではないかと思います。

支払う側の視点ではここでこの話題は終了となるでしょうが、

その給料をもらう側としてはどうでしょうか。

自分がいくら努力しても上達しても昇給はなく、

配車担当者からの指示次第で、

割のいい客先の有無や多寡が決まるのであれば、

どのようにしてその会社で仕事を続けるモチベーションを維持・向上させられるでしょうか。

昔はトラックドライバーはあまり長く同じ会社に勤めず、

条件のいい会社があればそちらに移っていくことが当たり前という感じでした。

人が足りている時代であればそれでもよかったでしょうが、

人手不足の現在では退職された時のダメージが大きいので、

様々な人材定着の施策が必要になります。

成功事例として、

「社屋を新しくきれいで明るいものにした」
「ユニフォームをおしゃれにした」
「YouTubeで自社のアピールをしている」

といったものがよくみられます。

こうした施策は「入口」としては効果が大きいですが、

その後長く働いてもらえるかということになると、

これらだけでは十分ではないでしょう。

やはり、

自分の働きがどのようにしてお金(給料)と繋がっているのかという

シビアな問題に向き合わなければ入社前と後とのギャップを埋めることはできません。

「トラックドライバーは歩合給が当たり前」
「歩合給にしないと会社がもたない」
「歩合給にしないとちゃんと働かない」

という業界の常識や慣習にまったく意味がないわけでもないでしょうが、

それしかないと言われればそんなことはない、

ということにもなるのではないでしょうか。

定期昇給を導入するのはハードルが高くとも、

基本給に原資をもっと配分したり、

賞与の配分を見直すことは十分可能だと思います。

実際、

大企業であってもやっていることは「配分の見直し」が中心です。

どんな会社であっても、

売り上げ・利益を上げる前に給与を上げるには、

先ずはこれまでの給与原資の配分を見直すしか方法はありません。

トラックドライバーの場合は、

少額の基本給+歩合給という体系そのものから見直すことが、

日々仕事や事業の実態に合った給与にするために必要な場合が多いと思います。

賃金の見直しは対処療法で行うとあとでとんでもない不都合が出てきますので、

ぜひ賃金を得意とする弊所にご相談ください。