作成日:2024/05/15
能力不足やメンタル不調でミスをするからといって社員に仕事をさせないと・・
今年4月より週に1回、ある公的機関にて予約制で相談を受けるお仕事をさせていただいています。
毎回、とても悩ましいご相談をいただきますが、
会社からのご相談で最近多いと思うのは、
「問題社員」(問題のある言動を繰り返す社員)
や
「メンタル不調により休職している社員」
といった事例に関するご相談です。
その中でよく話されるのは、
「ミスをしたりトラブルを起こすから、ほかの社員より限定的な範囲で仕事をさせている」
といったことです。
そうしたくなるお気持ち、よくわかります。
しかし、こうしたことを続けながらその社員と会社が、
例えば復職させるかどうかの判断について紛争になり、
それが裁判所での紛争に発展すると、
裁判官から
「その仕事をさせないままだったということは、その仕事をすることは社員であるうえで必須ではないということなんでしょ?」
というふうにみられるのではないかということを懸念します。
上記のような意見を会社(事業主さま)が聞いたら、
とっさに「何を言うか!人の苦労も知らずに!!」
と憤られると思います。
しかし、よく「第3者の視点」ということがいわれますが、
第3者は紛争の当事者に対して利害関係を持たない立場なので、
言われてみればそういえなくもないが当事者には思いもしない方向からの意見が出てきます。
目を転じて社員のほうにその状況について第3者的に意見を言うなら、
「ミスやトラブルを防ぐために、あなたはどんな努力をしたのですか?」
といったことになるでしょうか。
もしかすると、こうした社員は会社からほったらかしにされていることが多いので、
初めて(しかも裁判官から)そうした指摘を受けて意外に思うかもしれません。
ここから見えてくることは、
「ミスやトラブルを起こさないために仕事をさせないことは間違った選択」
ということになると思います。
そもそも、
会社は仕事をする場所であり、社員として雇用されているのはやってもらうべき仕事があるから
とうことですので、
期待していた能力や健康状態に不足があるからといって、
安易に仕事の範囲やレベルを引き下げると、それが大きな問題に発展する可能性があります。
また、相談を受けながらいつも思うのは、
「ついつい自分たちだけでなんとかしよう」
と努力してしまうことが多いことです。
それ自体は真面目な姿勢であるといえますが、
問題を先送りにしてしまうという側面もあります。
そのため、相談に来られた段階では紛争が回避できない状況であることも多いです。
社労士や弁護士といった外部の専門家に依頼するコストをかけたくないこともあるかもしれませんが、
古かったり性能が不足している機械を工夫して何とか使い続けることはできても、
人材については工夫して何とかなるということはほとんどありません。
向き合うべきこと(能力不足やメンタル疾患など)には正面から向き合い、
自分たちでは難しいかもしれないと少しでも感じた段階でしかるべき専門家に相談する、
という発想を持っていただければ問題の解決に要する時間や労力がぐっと減ります。
弊所では、初回のご相談(1時間程度、訪問可)で料金を頂戴することは基本的にありません。
お話を伺い、弊所との顧問契約やコンサルティングをお勧めすることはありますが、
相談者さまが弊所を信用・期待していただいて初めてご契約となりますので
まずはお気軽にご相談いただければと思います。